耐震補強

みなわい

2007年07月20日 11:34

またまた、中越地方で大きな地震がありました。

私たちの常識を覆す地震でしたね。
一度大きな地震が起きた地域は、他の地域より安全だ。数百年先まで地震は来ないと考えるのが常識でしたが、驚きの結果でした。

一億円の宝くじに複数回当たった人もいるようですから、確率というものは長い眼で見れば正しいのかもしれませんが、思いもよらない結果も出ると考えるべきなのですね。

また、京都沖を震源とするマグニチュードもそこそこ大きな地震が発生したのですが、こちらも近畿地方ではほとんどゆれを感じずに、大きなゆれは遠く北海道や東北地方で起こったようです。
震源が非常に深かったのと、地球の内部構造の問題であるようですが、これも私たちの常識からは考えにくいことでした。

このように考えると、地震に対しては自分で身を守るしかありません。
新築する人は、充分耐震性を考えた家を建てることであり、既存の建物に住んでおられる方で、耐震性の低い住まいに住んであられる方は、耐震補強を考えなければなりません。

耐震補強をするとなるとまず最初に耐震診断を行ないます。

そこで大きな問題があります。
耐震診断法がこれで良いのかと思うことがあります。

耐震診断法は国が作ったものです。
国が作るものというのはいつも安全率がやたらかけられています。
その基準をつくった行政マンが責められないように、何でも安全側に判断します。

ですから、基礎に鉄筋が入っていないということで、診断の数値は0.7倍されてしまいます。
昔の玉石に乗っている形の基礎なら0.7倍若しくは0.6倍、何でもかんでも数値を小さくする掛け算がされていき、昔ながらの建物ならば安全率が0.3ぐらいにすぐなってしまいます。

私たちが現場で調査しても、この建物は問題ないのじゃないかと思ってみても、数値は0.3といったことはざらにあります。むしろ、そういったケースの方が多いのです。

住まい手の方はその結果の数字を聞いて、これじゃ建て直すしかないな。でも、そんな資力はないし、そのままほっておくしかないなという結果になっているようです。

しかし、冷静に見てください。
あんなに大きな地震が起こった地域でも倒壊している建物の割合は意外と低いはずです。
テレビで映し出される柏崎の町でもすべての建物が倒壊しているわけではなく、倒壊していない建物の方が多いのです。

しかし、柏崎の建物を地震前に耐震診断するとほとんどの建物は数値が0.3ぐらいになるでしょう。
それでも倒れる家と倒れない家がある。ここが重要なのです。

倒れる家は数値が低いからだけではなく、構造的な欠陥があるのです。
地震前に問題のあるの部分を少しだけでも補強することができていれば、倒壊に至らなかったことも考えられます。

今の制度は何でも数値化する。その数値に達しなければ意味が無い様に勘違いしてしまいますがそんなことはありません。

確かな知識を持って、少しだけでも手をかければ必ず耐震性は高まります。

大きな地震が来たときに、自分の住まいが震度6強の地域に入る確率はどれぐらいでしょうか。
これは、おこってみないとわかりませんが、耐震診断の結果であきらめてしまって補強を断念し、震度6弱のゆれで倒壊してしまうということもありうるのです。

耐震補強は構造体を改修するため、費用が高くつきがちです。
高くつくためあきらめるというのではなく、自分が可能な範囲でできる限りのことをするということで、激震地の中で完全に倒壊するか、命を守ってくれるのかの差が出てくるのです。

耐震補強というものを、国や県の制度という見方で考えずに、自分の身を自分で守る。それも自分の可能な範囲で。
そんな考え方で耐震補強を考えて見られてはいかがでしょうか。


もう一点。
耐震補強というのは微妙に難しい問題もあります。
伝統的な土壁の家に、ベニヤ板を使った補強などをすると、耐震壁の硬さが違うため、かえって良くない結果になったりもします。

国や県の判定や補強の基準では問題ないという数字にはなっても、実際は問題が起こるということもあります。
土壁などを使った昔の住まいの補強については、伝統的な木造建築のことが良くわかった技術者に相談する必要があります。
田舎の大工さんでも、バンバンベニヤで補強すれば良いと思っている人もありますが、大変な間違いです。


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