先日、近々引渡しを行なう住まいの気密測定を行いました。
測定値は約2.3cm2/m2でした。
温暖地域では5cm2/m2以下は高気密、寒冷地では2cm2/m2以下が高気密仕様となっています。
滋賀県南部は寒冷地ではないので、寒冷地の仕様に近いということは充分な気密性があるといえます。
気密の測定についてはそんなに難しいものではありません。
しかし、気密の考え方が重要なのです。
何のために気密を確保するのか。
ここが大切ですね。
気密測定技能者の試験はそんなに難しいものではありませんが、気密の意味を本当に理解している人はどれぐらいいるでしょうか。
何のために気密を確保するのか。
まず、一番にあげられるのは、建物の断熱性を確保するためですね。
ハウスメーカーなどは、何のために気密を確保するのか。
気密性を高め、住まいを販売するために売り物の一つにするためですね。
営業マンは、本当に気密、断熱が分かっているでしょうか。
気密の値が約2.3cm2/m2であった。
この値はどんなものでしょう。
高気密を売り物にしている住宅から比べるとすごい値ではありません。
1cm2/m2以下の住宅もたくさんあります。
それでもこの住まいにとっては非常に意味があるのです。
住宅に必要な性能は断熱、気密だけではありません。
いろいろな性能やデザイン、住みごこちなど、すべての性能、機能、生活のしやすさなどを考えなければなりません。
そういった中での断熱、気密でないと意味が無いのです。
この住まいは、木のよさを活かそうとしている住まいです。
気密性を高めるだけなら、集成材を使ったり、既製品の造作材を使ったり、窓を小さくしたりします。
高い気密性を売り物にしているハウスメーカーは、そんな風な家づくりを行い、特に断熱などに興味を持っている住まい手を取り込もうとしています。
しかし、数値を追いかけても意味が無いのです。
断熱で言えば、無駄なエネルギーを使わずに、なおかつ快適に過ごせれば良いのです。
温暖地と寒冷地で気密の基準が違うのもそのためです。
建物内部と外部との温度差があまり大きくないところ、風の強くないところでは気密性は影響が少ないのです。
そうはいってもすかすかの住宅では、断熱は確保できない。
ですから、この木の住まいが目指している断熱、気密は、建てたい住まいの機能を損なわない形で、最大限の気密性を確保し、断熱性を確保すると言うことになります。
木の住まいを造る中で、気密性を確保する。
これは工務店さんの丁寧な施工とちゃんとした知識があることが必要となります。
良い結果が出たということは、工務店さんの仕事の確かさ、丁寧さが証明されたことになります。
私は伝統技術を誇るのと同じぐらい誇りを持ってよいものだと思います。
もう一度書きますが、自然素材を使った住まいで気密性を確保することは、細かで確かな施工が必要となるのです。
私は、5年前に県産材を使い自宅を造りました。
そのときも断熱、気密に注意を払いながら住まい造りを行いました。
そのときの気密の測定値が4.3cm2/m2だったと思います。(先日、再度測定しましたがほとんど変わっていません)
4.3cm2/m2という値は今回の測定値よりも良くない数字ですが、一応高気密の範囲に入っていますし、隙間風が無い、部屋の上下で温度差が少ないなど実感として良さを感じています。
その気密性能に加え、床の杉板(これが重要)が合わさって、非常に快適に生活しています。
それから5年、工務店さんと一緒に断熱性能や気密施工について工夫を行なってきました。
木の住まいの良さを活かしながら、断熱性能、気密性を考えることがほぼ完成に近づいたと言えるのではないかと思っています。
設計者と工務店が協力して住まい造りに取り組んできた成果ではないかと思っています。
気密性を確保する意味として、もう一つあげられるのが、機械換気を確実にすることがあげられます。
こちらについてはあまり言うべきところがありませんね。
私たちが造る住まいは、問題になるような建材はほとんど使っていません。(もちろんF☆☆☆☆も)
24時間強制的に換気をし続けなければならないことはありません。
もちろん、人間が生活する中で必要な換気はあるのですが、自分で窓を開けたりしながら生活すればよいのです。
問題物質を使いながら、強制換気を行い、その換気をうまくいかせるために気密を確保するなど意味の無いことです。
結論を書くと、住まい手にとってより良い住まいを設計する(私たちは木を活かした住まいが良いと考えています)。
その住まいに住んで快適な環境を確保するために必要な断熱、気密を確保する。
これで良いのです。
でも、必要な性能が確保できているのかを確認する必要があります。
これが気密測定なのです。
出来るだけ小さな値を出すことを目的にするのではなく、その建物があるべき数値を確保できているかを確認するのです。
木の住まいを造っている人の中には、気密は必要がないという人がありますが、これは誤りとはっきりいえると思います。
木の住まいの良さを損なわない範囲での最も優れた気密施工が必要なのです。
もし気密が必要ではないなら、窓はアルミサッシを使わずに昔のようなスカスカの建具を使えば良いのですし、壁に隙間があっても問題がないということになります。
昔から大工さんも左官屋さんも出来るだけ壁には隙間が無いように施工をしたでしょう。
建具屋さんも隙間の少ない建具を作ってきたと思います。
断熱性能を確保するために気密を確保するということは同じことなのです。
高気密高断熱を売り物にし、住まいにとって大切なものを捨ててきたハウスメーカーなどを嫌うあまりに、断熱、気密などの重要性を考えない自然派の方もおられますが、多少の勘違いがあるのだと思います。
気密性能についての問題は、ツーバイフォー住宅や合板耐力壁などを良いものだと考えるのとよく似ています。
住宅の性能の一つだけを捕らえて、それに特化して話を進めると、合板の耐力壁は強いということになってしまい、ハウスメーカーなどが宣伝に使うことになります。
しかし、住まいを総合的に考えたときに、合板は耐久性や健康などに問題があります。
そういったことを冷静に判断し、かつ、合板の良いところは良いところとして活かしてやる必要があるのです。
私は、設計と言う作業を通じ、住まいのあり方を追求していきたいと思っていますし、古き良き伝統と新しい技術の融合を考えて行きたいと思っています。
その一つの作業として、「気密測定」もおこなっています。