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Posted by 滋賀咲くブログ at

2007年10月28日

広葉樹と針葉樹

二日前の報道ステーションで、日本の森林の現状や問題について報道されていました。

今、日本の山が荒れていて、災害が起こったりする原因となっているという話でした。
大きく間違っている話ではなかったのですが、今後の対策として間違った方向に行きそうな雰囲気でした。

現在の山が荒れているのは、戦後行なわれた拡大造林のせいであり、山の多くが、広葉樹から針葉樹に植え替えられたからであるという感じでした。
このままだと、環境に悪い影響があり、植林された針葉樹を伐って、広葉樹の山にすれば解決するような感じにとった人も多かったのではないでしょうか。

確かに戦後行なわれた造林のやり方は問題があったと思います。
本当に利用できるかどうか、今なら無理だと思うような場所まで杉を中心に植林しました。
それに木材の輸入自由化が重なり、山奥の杉材はもちろん、利用が可能である山でも木材が切り出されて利用されることがどんどん少なくなってきました。
そうなると報道でもあったように広葉樹に比べて根の浅い針葉樹の表土が流れ、災害につながっているということになるのです。

それでは、山に針葉樹を植林することは環境にとって問題があるのでしょうか。

山だけを単独でみると針葉樹より広葉樹のほうが良いということになります。
しかし、針葉樹の良いところは、建材として利用できることです。

皆さんもご存知だと思いますが、木材は地球温暖化の原因となるCO2を吸収し、成長していきます。
その木材を利用したり燃やしても、地球上のCO2は増えることはありません。新たに植林して成長する木材が吸収してくれるからです。

これに対して、石油資源などを多用して作られるプレハブ住宅などは、作れば作るほど温暖化を進めることになりますし、製造時のエネルギーも木造住宅に比べてかなり多くかかります。

物事を広く考えると針葉樹を植えて活用することは環境に非常に優しいことなのですが、最近では人間の近くの里山の杉林を広葉樹に変えてしまおうと考えている方も多くおられると思います。
広葉樹を植えたりすることは間違っているわけではありませんが、もっと広い目で山を見ていくと、人間の利用活用ということも視野に置くほうが環境に関しては優れているといえるのです。

今、山の問題は針葉樹、広葉樹という問題ではなく、木材が利用されなくなり(針葉樹も広葉樹も同じ)、手入れがされなくなったことです。
もちろん人間の手が届きにくいところまで針葉樹を残す必要はありません。

外国からただ安いというだけ(今、日本に入ってきている木材は腐りやすく、シロアリにも弱い)で輸入されている木材を利用するよりも、日本の針葉樹を大切に使い、資源の無駄遣いをやめ、地球温暖化もストップさせることが重要です。

日本の針葉樹を使わないということは、日本から田んぼをなくし、その跡地は荒れ放題にほって置き、外国産の米を輸入しようとしているのと同じです。

報道では、針葉樹がダメで広葉樹が良いということを訴えようとしていたのではなく、山に手が入っていないことが問題だといっていたのですが、ニュースキャスターの表現や全体の構成の中で誤解を招くような結果になったのではないかと思ったりしました。

職場で書いているブログから転載しました)  
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Posted by みなわい at 08:10Comments(2)みなわいせんせい

2007年09月19日

ベタ基礎

以前、基礎のお話をしました。

基礎の立ち上がりの部分のフックが大事なのですよとお話しましたね。

今日は、最近多くなってきたベタ基礎のお話をしたいと思います。
ベタ基礎とは、昔からある逆T型の基礎ではなく、建物の下部全体がコンクリートのスラブ(床板のこと)になっている基礎です。
そのため、建物の重さを受ける面積が大きいため、軟弱な地盤でも不同沈下を起こさないということで、最近採用されることが多くなりました。
ベタ基礎は、先ほども書いたように、建物の下部に土の部分が残らないため、シロアリ対策にも有効であると考えられています。(土の部分が残らないのはかえってシロアリに良くないという主張もあります)

建物を丈夫にするためには基礎を丈夫にしようという考え方が定着してきているのがベタ基礎が採用されるようになった原因ですが、本当のところは意外とコスト高にならないというのが大きな要因であるともいえます。
従来の逆T型の基礎に、シロアリ対策や防湿のためのコンクリートを後ほど打つと、工程が一回余分にかかり、ベタ基礎より余計に費用がかかってしまうこともあるのです。

まあ、理由はどうあれ、少しでも強い基礎が採用されていることは好ましいことです。

じゃあ、ベタ基礎なら何でも良いのかというのが今日の本題です。

先ほども書いたように、ベタ基礎は建物全体の重さを大きなスラブで支えるため、スラブの大きさによって本来使う鉄筋の種類やピッチを変えなければならないのです。(詳しい話は専門的になりすぎるので省略させていただきます)
そういったことを何も考えずに、「私どもの建物はベタ基礎ですから強いです」と言っている住宅メーカーがほとんどです。
コンクリートの立ち上がりで区画された面積が大きいほど、使う鉄筋を太くしたり、ピッチを細かくしたりする必要があるのですが、そんなことは考えていないケースがほとんどです。
鉄筋の太さやピッチは構造計算をしないと決めることが出来ません。
木造2階建ての建物は法律で計算が省略できることになっているので、それを良いことに細い配筋で済ましていることが多いのです。
構造計算を省略するならば、安全のため太目の鉄筋を使ったりすべきなのですが、法律で求められなければ少しでも安いほうになびいてしまうのが住宅産業の現状です。

とりあえず、ベタ基礎なら安心という考え方はやめたほうが良いと思います。
ちゃんとした根拠のある基礎をしておくことは、長い将来の安心を得ることが可能です。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、実際の鉄筋の太さの違いをご紹介します。(両方とも鉄筋のピッチは20cmです。太さの違いがわかっていただけるかな?)

まず、細い鉄筋(D10)。


次に少し太い鉄筋(D13)。


少しわかりにくいかもしれませんが、この微妙な違いで建物の耐力はまったく違うものになるのですよ。

どこでも太い鉄筋を入れれば強いのは間違いありませんが、お金が余分にかかってしまいます。
必要な部分に必要な鉄筋。
これが、丈夫なベタ基礎の作り方です。  


Posted by みなわい at 22:04Comments(0)みなわいせんせい

2007年09月02日

建物の値段

建物の値段については、今までも何回か書かれてきました。

住まいの小学校は、住まい手の方にさまざまな情報がマスコミを通じて流れる中で、本当の情報を知ってほしくて始められたものです。
ですから業界の方には叱られるかもしれませんが、とことんの話をしてみましょう。

まず、安さを売り物にしている住宅業者さん。坪単価が25万からとか35万とか、私たちが建てる建物よりもかなり安い。半分近くですね。
少し前にこういった会社の社長さんと少しお話しましたが、荒利は3割もあるそうです。
お金儲けのためにやっておられるのですから当たり前かもしれませんが、驚きです。

私たちが建てている大工さんの請負費用は倍近くになることもあるのですが、下手をすると赤字になることもあるようです。不思議と言うしかありません。
でも、安さを売り物にしている業者さんは、ほとんど丸投げですから、まず自分の利益を確保してから下請けに出す。ですからお客さんさえ捕まえることが出来れば、確実に儲かるようです。

ただ、安い住まいが悪かろうというのは、昔の話で、最近ではそれなりに造られています。
100均の商品のようなものですね。
化学物質は使っているけれど、フォースター認定は取れている。少しは問題もあるかもしれないけれど許容範囲内。
柱は腐りやすいホワイトウッドの集成材を使っているけれど、健康に問題のないとされている防腐材をつかっているので、25年ぐらいの耐用年数内なら大丈夫。
それよりも、お客さんの好みの住宅設備はまとめ買いをするのでむしろ良い商品を提供することができる。
こういった住まいをお得だと考える人もあって当たり前です。

ただ、ただでも安い価格の住まいをさらに安く下請けに出して造る住まいに不安はあるのは当然ですので、そのあたりを理解して購入しなければなりません。

近くの業者さんに、不動産屋さんやハウスメーカーの下請けばかりをしておられる建設会社があります。
その社長さんは飲み屋で儲かってしょうがないといっておられるそうです。

不動産屋の下請け価格は、高くても坪単価は35万ぐらい。安いときは30万ぐらいもあると思うのですが、それでも儲かってしょうがない。
どういうことでしょうね。
その建設会社も職人さんは下請けを使っています。
職人さんはたいそう絞られていると思いますが、少なくとも良い仕事は出来ないでしょうね。
叱られない最低限の仕事を目指すのだと思います。

不動産系の住宅会社と建物を契約するときは、建物の坪単価の考え方を少し変えなければなりません。
一般的に坪単価で50万以上で契約すると思うのですが、実は土地で設けられない分が建物価格に乗っかっていると思わなければなりません。
先ほども書いたように、下請けに丸投げされるときには坪単価で20万ぐらい抜かれているということです。
ですから、地場の工務店に頼んだときに坪50万でできる家と同じと考えてはいけないのです。
土地不足の中で土地を提供する分が、土地代として添加されずに、建物代とごちゃ混ぜになっているのです。
難しいかもしれませんが、それも考慮して、建物の良し悪しを見なければなりません。

建物の中味によって坪単価が変わるのは当たり前ですが、発注の形態によっても実は違いがあるのです。建物に見かけ上払う価格が同じであっても、本当に建物そのものに純粋に費用がかけられているのかどうかは、冷静に考えればわかります。

大手のハウスメーカーも同じですね。
営業マンの費用、宣伝広告の費用、会社の経費などを引いた費用が住まいの本体にかけられる費用なのですが、それも考慮した上で、得したか損したかを考えなければなりません。

私は設計事務所をしていますが、同じような建物を建てる場合で、同じ工務店に依頼して建てる場合でも坪単価が同じでも違いがあります。

坪65万で工務店に依頼したとしても、設計事務所が設計や監理をしている場合は、その分工務店の経費は少なくて済みます。設計はもちろん住まい手の方々との打ち合わせをほとんど設計事務所が行なうわけです。
一方、工務店が設計も施工も一式で請け負った場合は、その費用の中で設計だけでなく、さまざまな打ち合わせなども行なわなければならないので、請負費用の一部をその経費に当てなければなりませんので、坪65万がすべて建築本体に当てられるわけではないのです。

設計費を別に払っているから当たり前の話なのですが、工務店に頼むときにその違いを感じないこともあります。

以上書いたことはほんの一部ですが、建物にかかる費用は非常に判断が難しいです。

やはり普通に考えて、高いものは高いだけのことはあり、安いものは安いだけのことがあると考えてよいと思います。
ただ、安い建物は大量発注や下請け業者の協力(泣かされ)などにより、価格差ほどの差があるかといえばそれほどでもないといえるかもしれません。
100均の商品が、値段ほど悪いと感じないのと同じですよね。

逆に高い建物はどうでしょう。
高い建物の評価は非常に難しいものがあります。
その良さは、時間が経って始めてわかるもの。
その良さはお金では量りにくいもの。
その良さはすべての人が同じように感じるものではないこと。
その良さがなんとなく感じられるが説明が簡単には出来ないものであること。

いろいろな事柄が絡み合って良さが感じられるということになります。

私たちのしている設計という作業も同じです。

この家、なんとなくいいねえと感じてもらえるための仕事が私たちの仕事なのですが、それを設計の良さによるものと感じてもらえるか。丁寧な仕事をほめていただける工務店さんがうらやましく思えることもよくあります。


長々書きましたが、いかがでしょうか。
少なくとも、超低価格。坪○○万で家が建つとか。

そういったキャッチをそのまま鵜呑みにすることだけはやめたほうが良いですよ。
  
タグ :コスト


Posted by みなわい at 21:57Comments(0)みなわいせんせい

2007年07月20日

耐震補強

またまた、中越地方で大きな地震がありました。

私たちの常識を覆す地震でしたね。
一度大きな地震が起きた地域は、他の地域より安全だ。数百年先まで地震は来ないと考えるのが常識でしたが、驚きの結果でした。

一億円の宝くじに複数回当たった人もいるようですから、確率というものは長い眼で見れば正しいのかもしれませんが、思いもよらない結果も出ると考えるべきなのですね。

また、京都沖を震源とするマグニチュードもそこそこ大きな地震が発生したのですが、こちらも近畿地方ではほとんどゆれを感じずに、大きなゆれは遠く北海道や東北地方で起こったようです。
震源が非常に深かったのと、地球の内部構造の問題であるようですが、これも私たちの常識からは考えにくいことでした。

このように考えると、地震に対しては自分で身を守るしかありません。
新築する人は、充分耐震性を考えた家を建てることであり、既存の建物に住んでおられる方で、耐震性の低い住まいに住んであられる方は、耐震補強を考えなければなりません。

耐震補強をするとなるとまず最初に耐震診断を行ないます。

そこで大きな問題があります。
耐震診断法がこれで良いのかと思うことがあります。

耐震診断法は国が作ったものです。
国が作るものというのはいつも安全率がやたらかけられています。
その基準をつくった行政マンが責められないように、何でも安全側に判断します。

ですから、基礎に鉄筋が入っていないということで、診断の数値は0.7倍されてしまいます。
昔の玉石に乗っている形の基礎なら0.7倍若しくは0.6倍、何でもかんでも数値を小さくする掛け算がされていき、昔ながらの建物ならば安全率が0.3ぐらいにすぐなってしまいます。

私たちが現場で調査しても、この建物は問題ないのじゃないかと思ってみても、数値は0.3といったことはざらにあります。むしろ、そういったケースの方が多いのです。

住まい手の方はその結果の数字を聞いて、これじゃ建て直すしかないな。でも、そんな資力はないし、そのままほっておくしかないなという結果になっているようです。

しかし、冷静に見てください。
あんなに大きな地震が起こった地域でも倒壊している建物の割合は意外と低いはずです。
テレビで映し出される柏崎の町でもすべての建物が倒壊しているわけではなく、倒壊していない建物の方が多いのです。

しかし、柏崎の建物を地震前に耐震診断するとほとんどの建物は数値が0.3ぐらいになるでしょう。
それでも倒れる家と倒れない家がある。ここが重要なのです。

倒れる家は数値が低いからだけではなく、構造的な欠陥があるのです。
地震前に問題のあるの部分を少しだけでも補強することができていれば、倒壊に至らなかったことも考えられます。

今の制度は何でも数値化する。その数値に達しなければ意味が無い様に勘違いしてしまいますがそんなことはありません。

確かな知識を持って、少しだけでも手をかければ必ず耐震性は高まります。

大きな地震が来たときに、自分の住まいが震度6強の地域に入る確率はどれぐらいでしょうか。
これは、おこってみないとわかりませんが、耐震診断の結果であきらめてしまって補強を断念し、震度6弱のゆれで倒壊してしまうということもありうるのです。

耐震補強は構造体を改修するため、費用が高くつきがちです。
高くつくためあきらめるというのではなく、自分が可能な範囲でできる限りのことをするということで、激震地の中で完全に倒壊するか、命を守ってくれるのかの差が出てくるのです。

耐震補強というものを、国や県の制度という見方で考えずに、自分の身を自分で守る。それも自分の可能な範囲で。
そんな考え方で耐震補強を考えて見られてはいかがでしょうか。


もう一点。
耐震補強というのは微妙に難しい問題もあります。
伝統的な土壁の家に、ベニヤ板を使った補強などをすると、耐震壁の硬さが違うため、かえって良くない結果になったりもします。

国や県の判定や補強の基準では問題ないという数字にはなっても、実際は問題が起こるということもあります。
土壁などを使った昔の住まいの補強については、伝統的な木造建築のことが良くわかった技術者に相談する必要があります。
田舎の大工さんでも、バンバンベニヤで補強すれば良いと思っている人もありますが、大変な間違いです。  


Posted by みなわい at 11:34Comments(1)みなわいせんせい

2007年06月22日

地盤の良し悪し

以前、基礎のお話をしましたが、いくら基礎を強くつくったとしても、その下の地盤が悪けりゃどうにもなりません。

最近では、スェーデンサウンディング試験という地質調査を行なうのが一般的になりましたが、この調査方法では地表の浅いところしか調査ができません。
住宅の基礎としては、比較的浅い部分がわかればよいのですが、大造成をしたりしている場合は、いくら宅地部分の基礎や地盤を補強しても、かなり問題が残る場合があります。

最近、郊外で造成されている土地には、安さを追求するために、本来、宅地として適当ではないような土地を造成して宅地化されていることもよくあります。

そういった問題を見極めて土地を購入しないと対策のたてようが見つからない場合があります。

それでは、どうして見極めたらよいのでしょう。

土地の名称から見つける方法がよく本などに書かれています。
谷、沢やサンズイのつく漢字の地名などには気をつけたりしたほうが良いということですが、そこまで言ってしまうと大津市や草津市などは全部ダメということになってしまいます。
大字ぐらいで判断すると良いのかもしれませんが。

それよりももっと直接的なことがあります。
地名については太古からつけられていることもありなかなか対応しがたいのですがこの方法は間違いありません。



写真は図書館に残っている古地図です。
少し読みにくいですが、現在の甲賀市あたりの地図です。

文字が右からかかれていて、「貴生川」などの地名がのっているのですがわかるでしょうか。

このように、図書館に残されている古地図を引っ張り出してきて、注意深く今の地図と比較するのです。

かなり昔に造成された土地は時間もたっているので問題も少ないのですが、意外と古地図にため池になっている部分が造成されて宅地になっていることが多いのです。

特に、草津市あたりは要注意のようですよ。

最近では、宅地開発の基準も厳しくなったため、絶対ダメと言えないかもしれませんが、できれば避けたほうが良いと思います。

他にもいろいろ方法はあると思いますが、始めが間違いだといろんな問題がついてきます。

プロに任せなくても可能なことは自分の足で確かめてみることも大事ですよ。  


Posted by みなわい at 19:53Comments(2)みなわいせんせい