この広告は365日以上更新がないブログに表示されます。  

Posted by 滋賀咲くブログ at

2008年07月07日

このままでは伝統構法の家がつくれない!

来週の土曜日(7月12日)に「このままでは伝統構法の家がつくれない!」と題したフォーラムが、東京新宿の工学院大学で開催されます。

職人がつくる木の家ネットのサイトでも紹介されています。)

昨年の建築基準法では建築や住宅業界が大混乱を起こしました。
主な原因は、一部の悪徳な人と充分な能力を持っていない審査機関や行政の責任です。
しかしながら、いつも通り、国は法律を改正することにより解決を図ろうとします。
法律で規制するということは、一部の悪徳な人を取り締まる効果はあるのですが、法律で決めきれない微妙で値打ちのあるものを排除する作用もあるのです。

建築基準法の改正はいろいろな建築に悪影響を与えていますが、特に伝統構法については、とどめをさそうというべきものなのです。
法律は、今現在、多く建てられ、問題を起こしているものに対していろいろな基準を作っていきます。
その基準を、手作りで丁寧に職人のわざと感性で作っていくものに当てはめようとするわけですから、伝統構法を建売住宅のレベルにまで引き下げようとする部分が多くあります。

これからの社会を考えたとき、地産地消、手作りの住まい、こういったことが本当に必要となるときに、この基準法の改正は国民皆さんにとって非常にマイナスになる部分が多いといえます。

今まで、いろいろ虐げられてきた伝統建築物に関する関係者は、今までじっと耐えて、よいものを作ればそれでいいんだという動きをしてきましたが、この法律改正に対しては、もう黙っているわけには行かないということになっています。

当日の申し込みは定員250名に対し、すでに400名近くの申し込みがあり、受付を締め切ることになっています。ロビーを使ったモニターによる聴講などで何とか対応する予定になっています。

全国各地からの申し込みが殺到するこの思いを何とか国にぶつけて行かなければなりません。

当日は、そのフォーラムの司会を担当することになっています。
1時から始まって6時まで、5時間にわたるフォーラムですが、スケジュールを立てると時間が足りない感じです。

何とか、皆さんの思いを伝えられるようにこの一週間で準備も進めなければなりません。

住まいの世界では、未だ、伝統構法は小さなシェアーしかありません。
しかし、来るべき循環型社会にとっては切り札となるべきものです。
高齢化している職人さん、その技術を少しでも継ぎたいと思っている若手の職人、その応援団であるべき木造がわかる設計者。

何も悪いことをしていない、むしろ良いことを将来につなごうとしている者たちが、官僚の皆さんが作った法律にとどめを刺されず、むしろ反撃できるようになるよう、がんばって行きたいと思います。

皆さんも応援してくださいね。
  
タグ :職人構造


Posted by みなわい at 23:25Comments(0)みなわいせんせい

2008年06月30日

時給2500円

時給2500円。

おっface08
高い時給だなと思われますか。

一日8時間働くと2万円。
確かにアルバイトであれば、良い単価ですね。

実は、これは職人さんの手間賃です。
高いか安いか考えて見ましょう。
一週間のうち2日休むとして、年間の5分の2を働くとすると、365÷7×5=260.7日。盆も正月も、祭日もあるから、年間の労働日数は約250日。

そうすると、年収が2万×250日=500万ということになります。
これを高いと考えるか、安いと考えるか。
少なくとも高いことはありませんね。
サラリーマンの場合、年収のほとんどが自分の収入になりますが、職人さんの場合、収入の中から自分の乗る車の費用、仕事で使う携帯電話の費用、自分が使う道具の費用などを出さなければなりません。

通常の会社なら、経費と人件費の割合は1対1ぐらい。
そうすると実質の年収は250万face08ということになってしまいます。

実際はどうかというと、職人さんの休みは日曜日だけです。
土曜も祭日も休まれないことが多い。
そんな働き方で、何とか年収を確保しているのが実体だと思います。

しかし、その年収を脅かすローコスト住宅があります。
大工職人の手間を1万円以下face08face08しか払わない。

それでも人件費が高いからといって、機械化や工業化を進める。
その割にはコマーシャルで芸能人に高い費用を払ったり、営業マンに歩合制で多額の成功報酬を払ったり、おかしな住まいづくりが蔓延していますicon08icon08

職人さんの仕事を減らし、手間賃を削って造られる住まいってどんなものでしょう。

外から見たら変わりは無くても、おかしなものができて当たり前です。
もし、おかしなものでないとしたら、くじに当たったようなものと考えるべきではないかと思います。

職人さんにちゃんと費用を支払って、きっちり住まいを建てれば数百万円ぐらいの差が確かに出てきます。
ただ、一生住む家ということを考えたとき、どちらが良いのでしょうか。

2000万~3000万ぐらい住まいにおいて2割ぐらいの違い。
高いものを買うのだから、ちゃんと費用を払うべきだというのと高い費用だからどうしてももう出す費用捻出できない。
どちらの考え方もあると思いますが、出来上がる住まいはプロの目から見たら違うのは歴然です。

ちゃんとした費用をいただいて丁寧に仕事をするのと、急いで次の仕事にかからないと食べていけないのと、同じ事をしても仕事が違うのは当たり前ですね。
ただ、職人さんもプロです。
アマチュアの住まい手の方に分かるような手の抜き方はしませんね。
それだけにタチが悪いと言えます。

私たちがお付き合いさせていただいている職人さんたちは、まじめでちゃんとした職人さんばかりです。
その職人さんたちが、今、困っています。
丁寧な仕事をしようとしても、安くて良いものがあるような宣伝がどんどんされます。
落ち着いて考えれば、そんなうまい話は無いのですが、どうしてもそんな話に引っ張られてしまう。

安くて良い「木の住まい」。そんなものはありません。
みんな、少しでも高くならないように努力はしていますが、ローコストということはありえないのです。

一生住む家。
どこにお金をかけて、どんな風に造っていくか。
そんなお手伝いをするのが私、設計事務所の仕事の大きな部分です。

設計事務所はデザイナーだと勘違いされています(デザイナーの方もおられますが)

オーケストラの指揮者のような仕事だと思っています。
でも、指揮者がどんなに頑張っても、演奏家がすばらしい腕を持っていても、おなかがすいて倒れそうな状態icon11ならどうしようもありませんね。  


Posted by みなわい at 18:41Comments(0)みなわいせんせい

2008年06月16日

4022ガル

岩手・宮城内陸地震の状況が徐々に伝わってきます。

地震の規模に対して、建築物の被害が小さいのが少し驚きです。
逆に、山の地すべりの大きさも驚きのひとつです。

今朝の新聞記事やテレビニュースで報じられていましたが、最大加速度は4022ガルが記録されたそうです。
阪神大震災の時の最大化速度が1000ガル弱だったように思いますが、驚きの数字ですね。

物が落下するときの加速度が約980ガル。その4倍の加速度です。

昔の建築物の設計基準は200ガルの加速度に対し、損傷(倒壊ではない)がないようにという基準でした。
地震の活動期に当たるのかもしれませんが、予想しなかった数値が続々と現れてきます。

私たちの対応策としてはどのようにしたらよいのでしょうか。

法律や制度に頼らず、自分でできる限りのことを行なうことが大事ですね。
耐震診断を行い、その数値の低さに耐震改修をあきらめる人も多くありますが、それは間違いです。

地震があってもすべての建物が倒壊するわけではありません。
また、倒壊しなかった建物はすべて耐震基準を充分満たしていたわけでもありません。
ほんの少しの違いで倒壊するかどうかが分かれる可能性もあります。

耐震診断をし、その判定の数値が0.3であって、数値を一応安全である1.0までするのに多大なお金がかかる。
そんなお金が無いので、改修はしないでおこうという方が多いのですが、自分の可能な費用の中で少しでも手をかける。
0.3が0.4になるだけで、人命が救われるかどうかの境目になる可能性もあるのです。

いつも言っているように、法律や制度が国民を守ってくれるわけではありません。
耐震診断の数値が1.0以上であれば、確実に大丈夫だと言うわけではありません。

法律や制度は一つの目安に過ぎないのです。

日本の国民は法律依存症であると言われています。
これも技術者の能力が低いからかもしれません。
  
タグ :地震対策


Posted by みなわい at 09:34Comments(0)みなわいせんせい

2008年02月16日

何のための気密?

先日、近々引渡しを行なう住まいの気密測定を行いました。
測定値は約2.3cm2/m2でした。



温暖地域では5cm2/m2以下は高気密、寒冷地では2cm2/m2以下が高気密仕様となっています。
滋賀県南部は寒冷地ではないので、寒冷地の仕様に近いということは充分な気密性があるといえます。

気密の測定についてはそんなに難しいものではありません。
しかし、気密の考え方が重要なのです。

何のために気密を確保するのか。
ここが大切ですね。
気密測定技能者の試験はそんなに難しいものではありませんが、気密の意味を本当に理解している人はどれぐらいいるでしょうか。

何のために気密を確保するのか。
まず、一番にあげられるのは、建物の断熱性を確保するためですね。

ハウスメーカーなどは、何のために気密を確保するのか。
気密性を高め、住まいを販売するために売り物の一つにするためですね。
営業マンは、本当に気密、断熱が分かっているでしょうか。

気密の値が約2.3cm2/m2であった。
この値はどんなものでしょう。
高気密を売り物にしている住宅から比べるとすごい値ではありません。
1cm2/m2以下の住宅もたくさんあります。
それでもこの住まいにとっては非常に意味があるのです。

住宅に必要な性能は断熱、気密だけではありません。
いろいろな性能やデザイン、住みごこちなど、すべての性能、機能、生活のしやすさなどを考えなければなりません。
そういった中での断熱、気密でないと意味が無いのです。

この住まいは、木のよさを活かそうとしている住まいです。
気密性を高めるだけなら、集成材を使ったり、既製品の造作材を使ったり、窓を小さくしたりします。
高い気密性を売り物にしているハウスメーカーは、そんな風な家づくりを行い、特に断熱などに興味を持っている住まい手を取り込もうとしています。
しかし、数値を追いかけても意味が無いのです。

断熱で言えば、無駄なエネルギーを使わずに、なおかつ快適に過ごせれば良いのです。
温暖地と寒冷地で気密の基準が違うのもそのためです。
建物内部と外部との温度差があまり大きくないところ、風の強くないところでは気密性は影響が少ないのです。
そうはいってもすかすかの住宅では、断熱は確保できない。

ですから、この木の住まいが目指している断熱、気密は、建てたい住まいの機能を損なわない形で、最大限の気密性を確保し、断熱性を確保すると言うことになります。

木の住まいを造る中で、気密性を確保する。
これは工務店さんの丁寧な施工とちゃんとした知識があることが必要となります。
良い結果が出たということは、工務店さんの仕事の確かさ、丁寧さが証明されたことになります。
私は伝統技術を誇るのと同じぐらい誇りを持ってよいものだと思います。

もう一度書きますが、自然素材を使った住まいで気密性を確保することは、細かで確かな施工が必要となるのです。

私は、5年前に県産材を使い自宅を造りました。
そのときも断熱、気密に注意を払いながら住まい造りを行いました。
そのときの気密の測定値が4.3cm2/m2だったと思います。(先日、再度測定しましたがほとんど変わっていません)
4.3cm2/m2という値は今回の測定値よりも良くない数字ですが、一応高気密の範囲に入っていますし、隙間風が無い、部屋の上下で温度差が少ないなど実感として良さを感じています。
その気密性能に加え、床の杉板(これが重要)が合わさって、非常に快適に生活しています。

それから5年、工務店さんと一緒に断熱性能や気密施工について工夫を行なってきました。
木の住まいの良さを活かしながら、断熱性能、気密性を考えることがほぼ完成に近づいたと言えるのではないかと思っています。
設計者と工務店が協力して住まい造りに取り組んできた成果ではないかと思っています。

気密性を確保する意味として、もう一つあげられるのが、機械換気を確実にすることがあげられます。
こちらについてはあまり言うべきところがありませんね。

私たちが造る住まいは、問題になるような建材はほとんど使っていません。(もちろんF☆☆☆☆も)
24時間強制的に換気をし続けなければならないことはありません。
もちろん、人間が生活する中で必要な換気はあるのですが、自分で窓を開けたりしながら生活すればよいのです。
問題物質を使いながら、強制換気を行い、その換気をうまくいかせるために気密を確保するなど意味の無いことです。

結論を書くと、住まい手にとってより良い住まいを設計する(私たちは木を活かした住まいが良いと考えています)。
その住まいに住んで快適な環境を確保するために必要な断熱、気密を確保する。
これで良いのです。
でも、必要な性能が確保できているのかを確認する必要があります。
これが気密測定なのです。
出来るだけ小さな値を出すことを目的にするのではなく、その建物があるべき数値を確保できているかを確認するのです。

木の住まいを造っている人の中には、気密は必要がないという人がありますが、これは誤りとはっきりいえると思います。
木の住まいの良さを損なわない範囲での最も優れた気密施工が必要なのです。
もし気密が必要ではないなら、窓はアルミサッシを使わずに昔のようなスカスカの建具を使えば良いのですし、壁に隙間があっても問題がないということになります。

昔から大工さんも左官屋さんも出来るだけ壁には隙間が無いように施工をしたでしょう。
建具屋さんも隙間の少ない建具を作ってきたと思います。
断熱性能を確保するために気密を確保するということは同じことなのです。

高気密高断熱を売り物にし、住まいにとって大切なものを捨ててきたハウスメーカーなどを嫌うあまりに、断熱、気密などの重要性を考えない自然派の方もおられますが、多少の勘違いがあるのだと思います。

気密性能についての問題は、ツーバイフォー住宅や合板耐力壁などを良いものだと考えるのとよく似ています。
住宅の性能の一つだけを捕らえて、それに特化して話を進めると、合板の耐力壁は強いということになってしまい、ハウスメーカーなどが宣伝に使うことになります。
しかし、住まいを総合的に考えたときに、合板は耐久性や健康などに問題があります。

そういったことを冷静に判断し、かつ、合板の良いところは良いところとして活かしてやる必要があるのです。

私は、設計と言う作業を通じ、住まいのあり方を追求していきたいと思っていますし、古き良き伝統と新しい技術の融合を考えて行きたいと思っています。

その一つの作業として、「気密測定」もおこなっています。
  
タグ :省エネ気密


Posted by みなわい at 14:00Comments(0)みなわいせんせい

2008年01月17日

耐震補強

昨日の新聞に、「震度6強 木造住宅85%倒壊のおそれ 耐震工事、16%どまり」という見出しの記事がありました。

耐震補強についての今回の記事ですが、いい加減さに少し怒りを感じます。

記事の見出しを読んでいると、震度6強の地震が来れば木造住宅の85%が倒壊する恐れがあるにもかかわらず、耐震補強は16%ぐらいしか行なわれていないように読めます。
しかし、記事を詳しく読むと、ある耐震補強工事を請負おうとする工務店の組合が耐震診断した住宅の85%が倒壊する恐れがあるというものです。
公的な診断ではないので、すべての住宅を平均的に診断するわけではありません。
耐震補強工事を請負おうとするため、無料で診断している団体ですから、当たり前のように補強が不要の住宅を調査するはずがありません。
そういった団体の診断結果をもって、木造住宅の85%が倒壊の恐れという見出しをつける新聞のいい加減さ、またその影響の恐ろしさを感じてしまいます。

現在、日本建築防災協会が耐震診断法を出していますが、その診断法自体が、昔の伝統的な住宅に適合しているとはいえません。
その診断法を持って、古い住宅を廻れば必ず「倒壊の恐れがある」という結果が出ます。
国民に地震に備える考え方を持っていただきたいという思いはわかるのですが、むやみに恐怖感を植えつけるだけでは本当の対策にはなりません。

この記事の根拠となっている組合ですが、昔は耐震補強材を高額で売りつけることで問題になった団体だと思います。
今では少しは組合員も増え、傍目から見るとちゃんとした団体に見えるようですが、実体はすごくばらつきがあり、未だに根拠に関係なく高い金物補強を売りつけている組合員もいると聞いています。

実際のところ、昔の木造住宅の耐震性はどうなんでしょうか。
国や行政団体が何らかの数値を持って判定する手法で耐震診断を行なえば、かなりの木造住宅が「倒壊のおそれ」となるでしょう。
もし、専門家の感覚(もちろん技術者としての総合知識を活かして)を信じていただけるならば、以下のようなものが本当ではないかと思っています。

老朽化し、手入れがされていない住宅は「倒壊する」。
手入れが行なわれているが、必要な耐震性が極度に不足している住宅も「倒壊する」。
その他の住宅で耐震性が低いものは、地震の条件によって「倒壊するおそれがある」。
ということだと思います。

ですから、老朽化している建物は、どんな補強を行なっても、倒壊は逃れられないと思います。
2番目の必要な耐震性が極度に不足している建物とは、耐力壁が不足していたり、バランスが悪かったりするわけですから、それなりの補強を行なえば、死人が出るほどの倒壊ということにはならないでしょう。
その他の耐震性の低い建物は、耐震診断をおこなったら必ず「倒壊する恐れがある」という数値の判定が出ると思いますが、本当に良く木造のわかった技術者にお願いし、部分的に補強を行なえば、数値では安全性が確認できる1.0以上の評価にならなくても、地震に対しかなりの耐震性を発揮してくれると思います。

耐震補強を金儲けの手段として考える団体のデータを安易に信用してしまう新聞って本当に大丈夫でしょうか。
  
タグ :地震対策


Posted by みなわい at 23:10Comments(0)みなわいせんせい