2008年01月17日

耐震補強

昨日の新聞に、「震度6強 木造住宅85%倒壊のおそれ 耐震工事、16%どまり」という見出しの記事がありました。

耐震補強についての今回の記事ですが、いい加減さに少し怒りを感じます。

記事の見出しを読んでいると、震度6強の地震が来れば木造住宅の85%が倒壊する恐れがあるにもかかわらず、耐震補強は16%ぐらいしか行なわれていないように読めます。
しかし、記事を詳しく読むと、ある耐震補強工事を請負おうとする工務店の組合が耐震診断した住宅の85%が倒壊する恐れがあるというものです。
公的な診断ではないので、すべての住宅を平均的に診断するわけではありません。
耐震補強工事を請負おうとするため、無料で診断している団体ですから、当たり前のように補強が不要の住宅を調査するはずがありません。
そういった団体の診断結果をもって、木造住宅の85%が倒壊の恐れという見出しをつける新聞のいい加減さ、またその影響の恐ろしさを感じてしまいます。

現在、日本建築防災協会が耐震診断法を出していますが、その診断法自体が、昔の伝統的な住宅に適合しているとはいえません。
その診断法を持って、古い住宅を廻れば必ず「倒壊の恐れがある」という結果が出ます。
国民に地震に備える考え方を持っていただきたいという思いはわかるのですが、むやみに恐怖感を植えつけるだけでは本当の対策にはなりません。

この記事の根拠となっている組合ですが、昔は耐震補強材を高額で売りつけることで問題になった団体だと思います。
今では少しは組合員も増え、傍目から見るとちゃんとした団体に見えるようですが、実体はすごくばらつきがあり、未だに根拠に関係なく高い金物補強を売りつけている組合員もいると聞いています。

実際のところ、昔の木造住宅の耐震性はどうなんでしょうか。
国や行政団体が何らかの数値を持って判定する手法で耐震診断を行なえば、かなりの木造住宅が「倒壊のおそれ」となるでしょう。
もし、専門家の感覚(もちろん技術者としての総合知識を活かして)を信じていただけるならば、以下のようなものが本当ではないかと思っています。

老朽化し、手入れがされていない住宅は「倒壊する」。
手入れが行なわれているが、必要な耐震性が極度に不足している住宅も「倒壊する」。
その他の住宅で耐震性が低いものは、地震の条件によって「倒壊するおそれがある」。
ということだと思います。

ですから、老朽化している建物は、どんな補強を行なっても、倒壊は逃れられないと思います。
2番目の必要な耐震性が極度に不足している建物とは、耐力壁が不足していたり、バランスが悪かったりするわけですから、それなりの補強を行なえば、死人が出るほどの倒壊ということにはならないでしょう。
その他の耐震性の低い建物は、耐震診断をおこなったら必ず「倒壊する恐れがある」という数値の判定が出ると思いますが、本当に良く木造のわかった技術者にお願いし、部分的に補強を行なえば、数値では安全性が確認できる1.0以上の評価にならなくても、地震に対しかなりの耐震性を発揮してくれると思います。

耐震補強を金儲けの手段として考える団体のデータを安易に信用してしまう新聞って本当に大丈夫でしょうか。


タグ :地震対策

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